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プレスリリース

三重富士通セミコンダクター、広島大学が超低消費電力CMOS増幅器を開発

2017年06月05日

三重富士通セミコンダクター株式会社
国立大学法人広島大学

~CMOSとして世界で初めてVDD=0.5Vで動作する80~106GHzのミリ波帯用増幅器を開発~

三重富士通セミコンダクター株式会社 (注1) (以下、MIFS)と国立大学法人広島大学 (注2) (以下、広島大学)は共同で、 MIFSのDeeply Depleted Channel(DDC)技術を用い、80~106ギガヘルツ(以下、GHz)の広帯域に渡って動作する超低消費電力CMOS増幅器を開発しました。

本技術の詳細は、6月4日(日曜日)から6月6日(火曜日)まで米国ハワイ州で開催されるRF回路技術に関する世界最大の会議「RFIC 2017(IEEE Radio Frequency Integrated Circuits Symposium 2017)」にて発表します。

背景

近年、移動通信のトラフィック量の急増に対応する5G(第5世代移動通信システム)や自動運転を実現するためのキーパーツである車載レーダーに向けてミリ波帯の利用が進んでいます。

5Gにおいては、1つの基地局から多数のユーザーに向けて電波を送信する「1対多地点」の通信方式が要求され、車載レーダーにおいては自動車の周囲全方位を検知する周辺監視システムが技術トレンドとなっています。いずれの応用においても、ミリ波ビームを電子的にスキャンするフェーズドアレイシステムが注目されています。

フェーズドアレイシステムでは、1つの送受信システムの中に数十から数百個の送受信回路が必要となるため、送受信回路の消費電力を削減することが重要な課題となっています。

開発した技術

MIFSのDDC技術を使うと、0.5V以下の電源電圧(VDD)で動作する超低消費電力トランジスタの製造が可能になります。DDCは標準CMOSと比べ、しきい値(Vt)のばらつきが小さく、性能低下を最小限に抑えながら低いVDDで動作します。

今回、広島大学は素子特性を引き出す回路設計技術を開発し、DDCテクノロジーと組み合わせることでCMOSとしては世界で初めてVDD=0.5Vで動作する80~106GHzのミリ波帯用増幅器を開発しました。また、最先端のプロセスに比べ、耐圧の高い55nmテクノロジーで低電圧動作させることにより、低消費電力と信頼性を達成することが可能となりました。

55-nm DDC CMOSプロセスを用いた0.5V動作W帯増幅回路のチップ写真
55-nm DDC CMOSプロセスを用いた
0.5V動作W帯増幅回路のチップ写真

0.5V動作W帯増幅回路の実測結果
0.5V動作W帯増幅回路の実測結果

コメント

  • 三重富士通セミコンダクター テクノロジー開発統括部長 甲斐睦章

    当社のDDCトランジスタは、標準CMOSに比べ、低電圧動作時の性能が優れています。その優位性がミリ波の領域でも実証されました。今回、広島大学と共同でミリ波帯用増幅器の開発を実現できたことを大変うれしく思っております。今後はDDCテクノロジーの能力を最大限に引き出せるような設計環境の構築を進めていきます。

  • 広島大学 先端物質科学研究科 教授 藤島実

    私たちは、これまで、デバイスの最大動作周波数近くで動作するテラヘルツ無線回路を研究してきました。この技術を応用し、性能劣化要因となる寄生抵抗を削減するレイアウト技術と、寄生容量をキャンセルする回路技術を組み合わせることにより、今回世界で初めて0.5V動作ミリ波帯回路の実現に成功しました。今回の成果は、高性能化技術が、低消費電力化やローコスト化につなげることを示したものであり、IoTデバイスへの貢献が期待できます。

DDCテクノロジーについて

現在、CSEM社 (注3) (スイス)と共同で、DDCテクノロジーを使った0.5V仕様の超低消費電力テクノロジー・プラットフォーム「C55DDC」の開発を進めています。本開発に使用したミックスドシグナルおよびRF設計対応のデザイン環境(PDK)はすでに提供可能で、スタンダードセル、SRAM/ROMといった基本ライブラリセット、ADC/DAC、PMU (注4) 、BLE (注5) 、Flashといった機能IPを2017年末までにリリースする予定です。

DDCテクノロジーは、素子ばらつきが小さいため、低電圧やアナログ回路に向いており、また、通常トランジスタと比べてボディ・バイアスの感度が高いため、製品仕様に適したトランジスタ特性に調整することが容易です。急拡大するIoT市場、特にウェアラブルデバイスに最適なテクノロジーと位置付けています。

注釈

注1 三重富士通セミコンダクター株式会社
本社:横浜市港北区、代表取締役社長:河野通有
注2 国立大学法人広島大学
所在地:広島県東広島市、学長:越智光夫
注3 Centre Suisse d’Electronique et de Microtechnique SA
本社:スイス・ヌーシャテル、CEO:Mario EL-Khoury
注4 Power Management Unit
注5 Bluetooth Low Energy
BluetoothはBluetooth SIG, Inc.の登録商標です。

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